女の敵になりすまし、性被害者女性を救う。クソッタレと呼ばれたスーパーヒーロー@インドネシア

彼は、性犯罪被害者の子供を“母親ごと”引き取り、養っていた。

インドネシアのほとんどはイスラム教徒。
インドネシアの治安は良いとは言えないが、このような犯罪は決して多いわけではない。

だからこそ、被害にあってしまうとなかなか言い出せずに手遅れになってしまったり
宗教上中絶を禁止していることから、事情が事情であれどうしても授かってしまった子供を手放せない。と悩む未婚の母親が少なからず居る。

婚前交渉が禁止のイスラームの世界で、未婚の子が妊娠したなんて一大事。

理由はどうであれ、哀れみと偏見が女性に向くのは避けられない。

悲しいけれど、その偏見は子供にも向かってしまう。

未婚の母だと不名誉になる保守的なイスラム文化から守るために

被害者と偽装結婚し、父親は自分という程にし
しばらくの間養って、母親が自力で社会に復帰できるまでのサポートをする。

母親が自力で育てられるようになると離婚して、何事もなかったかのように日常に返す。
離婚のタイミングは母親の自己申告。彼は別に何年でも構わない。とのこと。
(離婚歴の方が未婚の母よりも母子共に世間からの偏見のダメージが少ないらしい)
もちろんその間、紙切れ上の夫婦には、体の関係は一切ない。

この活動に支援や団体はない。全部彼が自分自身でやっている。

だから、彼は周りから“クソったれ”と呼ばれていた。

彼はインドネシアの最高位、国立インドネシア大学を卒業した優等生。

ただし彼は破れたシャツ、ボサボサの長髪に、無精髭。(元)ベビースモーカー。
そして、イスラム教徒の彼は、酒は飲む。豚は食べる。祈らない。何も守らない。

エリートなのに汚い。宗教も守らない

そのくせ重婚(イスラムでは厳しい条件と妻の承諾により最大4人までと結婚できる)ばっかりして、デキ婚?となるくらいの早いペースでいつも子供が産まれ、離婚を繰り返すクソ男だと周りは彼を毛嫌いする。

それもそのはず。

彼は被害者の母親と子供を守るために、

どうして結婚すると同時に子供ができて、
数年経つと離婚してを繰り返しているのかなんて誰にも言っていない。

この話を知っているのも、彼の両親と親友数人、そして“外国人の友達”だけ。

周りから見たら、宗教も守らないで重婚するくせに子供作って離婚する、

ただの“クソったれ男”だった。

この2−3年ほどですでに3人との重婚、離婚を繰り返している。

そして、この“秘密”を守るために、奥さんたちには絶対に事情を言わないように。と念を押している。

そのため、奥さんたちも「素敵な人だと思って結婚したけどうまくいかなかった。」と周りには言っている。

被害者の女性が家族に打ち明けられたのなら、女性とその家族しか事情を知らない。
打ち明けられなかったのなら、その女性の家族も知らない。

彼と被害者女性の間で起こる、“完全犯罪”であり、
その女性やその家族は心の底から彼に感謝しているが、それが表に出てくることはない。

もちろん、その偽装結婚した奥さんたちに見返りも全く求めていない。

「偽装結婚だから、これで結婚した気になったら俺も犯罪者と同レベルだからね。」と言い

女性たちには絶対に触れない。
生活資金も「払えるだけ自分で払って」と言い、足りない分は彼が補填する。その金銭支援にも、見返りは求めていない。

3人のうち2人がすでに自立し、もう自力で育てられるから大丈夫だと言うと
そのまま離婚届を出し、「たまに子供の写真だけ送ってほしい」と言い、それ以上は何も言わない。

ただしそんなこと、誰も知らない。

近所の知らない人からいきなり絡まれることもあった。

事情を知らない彼の友達の“ほとんど”は居なくなってしまった。

事情を話しても理解されずに距離をおかれてしまった人もいる。

どうしてそんなことをするのか?

誰がその質問をしても「なんとなく、やりたいと思ったから」以外返ってこない。

裏に何か大義名分があるんじゃないかと疑ってしまうけれど、
本人曰く、そんなものはないらしい。

本人がないと言い張る以上、真実はそれだけ。

「もうちょっとお金があれば、何十人でも面倒見るんだけどね

ただ、自分の意思で“やらかした”女の面倒は見ない。ほんとうに苦しんでいる被害者だけね。」

そう言うと、最近は1ヶ月に一箱くらいまで“禁煙”した、タバコを吸う。

ただ、自分が守りたいものを守っているだけで、

周りに理解されずにひどい言葉を浴びされ続けるのは辛くないの?と聞くと

「まぁ、あいつらは俺を地獄に落ちろだの神様がどうだこうだ言うけど

こっちは普通に生きているだけで、あっちはお前は正しくないって攻撃してくる。

どっちが正しいことをしてるかは、その神様に決めさせようぜ。ってこと。

神様ってそんな馬鹿じゃないと思うし、それで俺が地獄に落ちるような馬鹿な神なら別に言うこと聞く必要もないかなって。」

よせばいいのに、こんな意見を敬虔なムスリムのインドネシア人の前でも普通に彼は言ってしまうので

とてもじゃないけど彼を理解する人はそんなに多くはない。

昔はただの“いい奴だけど”酒飲みの高学歴ヤンキーだった彼。
この突然の変化に、彼の周りの人もショックを隠しきれていない。

半数以上はもう彼は変わってしまった。と離れていってしまったそう。
事情を知らない人は彼を怖がり罵る。
事情を知っている人でもここまでやる彼に恐怖や何か裏があるという疑惑をもたれ、そっと距離を置かれる。

彼とは7年ほど仲良くしているけれど、
この突然の変化は、確かに衝撃以外の何者でもなかった。

これはいくらなんでも突き抜けすぎてて、ちょっと何が起きたのか気になる。

そう思ったけど、聞いても無駄だと思ったので
ただ、「へぇ、そうなんだ。」としか言えなかった。

インドネシアを出発する日、空港までの途中でなぜか彼は花束をくれた。

え?なんで?と聞くと

「こいつ(共通の友人)が俺のこの話をちひろにしちゃった。と言われたとき、正直ちひろも俺の前から消えると思った。
今日で最後だろうな。と思って全部話したけど、へぇ、そうなんだ。以上にあんたが何も言わなかったのにびっくりした。そのお礼だよ。」

ごめん、一連の話よりこの花束の方が理解できない。と言うと

「黙っとけビッチ」と捨て台詞を吐かれ、にっこりと微笑まれた。

それにちょっと笑った。

横にいた“こいつ”もちょっと笑ってた。

昔の彼の一面が一瞬だけ見えたので、ふたりでちょっと安心したのかもしれない。

「何かあったの?なんでここまでするの?」

そんな風に思ってしまうのがそもそもの愚問だったのかな。

誰かにとってのクソったれは、誰かにとってのスーパーヒーロー。

ただ、このスーパーヒーローは、

あまりにもうまくクソったれの仮面を被っているので、絶対に表に出てこない。

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